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  The Game / The Documentary

 Documentary Documentary [Compton Collector\'s Deluxe Edition]
The Game / The Documentary (フル試聴

 全米最凶最悪の犯罪地帯として恐れられる西海岸コンプトン出身24歳子持ち。50centに見出されてDr.Dreが惚れ込んだ超ラッキー・ガイ。そんなどえらい奴がデビューするぞと言いながら、明らかに意図的な小出しリークでギリギリのところまで飢餓感を煽り続けてきた通称”Hip-Hop史上最大のハイプ野郎”=The Gameが遂にその全貌を露わにした。

 近年の総合格闘技エンターテイメントと化したWWE的ギャングタ・ラップに少々辟易気味の自分は「全然大したことないやん」と嘲り笑う準備を整えていたのだが、これが思いのほか素晴しくて驚いた。とは言ってもやはり50centのような圧倒的カリスマ性は無いし、NaSのような誰もが唸るスキルを持ち合わせているわけでもない。上背があってタトゥーまみれの筋肉質な体躯は存在感十分だが、そのマスクはとうてい男前とは言い難いし、関取風の掠れ声もインパクトに欠けている。しかしさほどギラついておらず、地に足がついた硬派な風情は他のG-Unit構成員よりは好感が持てる。またその淡泊なラップもさながら霜降りの極厚ステーキのようにジューシーな超豪華トラック&ゲスト陣と相性が良く、過剰なこってり感を巧みに回避している。

 「人生はゲーム、生活を良くできるかどうかはゲーム・プレイヤーとしての資質にかかっている」なんて”この世はいつも夢舞台”的導入から始まる本編は、そのタイトル”The Documentary(実録)”が象徴するように、The Gameが契約を勝ち得てから現在に至るまでを主とした自叙伝をメイン・テーマとしている。そのため全編を通して、西海岸の著名ラッパー&アルバムを主とする固有名詞がかつてないほど大量に出てくるのが実に印象的だ。ブラックミュージックに明るい音楽ファンであれば、登場する名前を追うだけでもかなり楽しめるだろう。またテーマがある程度限定されているためか、紋切り型のギャング・バングなライムはあまり出てこず、カースワードもこの手の作品にしては少なめだ。

 こうしたリリック面の特性はわたしが本作を気に入った大きな理由であるが、やはりサウンドも他の凡作とは格の違いを見せつけている。今をときめく超豪華プロデューサーたちがここが見せ場とばかりに腕によりをかけた最上級のトラックばかりが揃っているのだから当然の話だが、それにしても凄い。メイン・プロデューサーであるDr.Dreがコラボレイターと手がけたトラックは全18曲中6曲と意外に少ないものの、Eminemを始め明らかにDr.Dre影響下のトラックが多いので、『2001』以降の最新型ドレー・ビートが基調となっている。重心の低いビートでシリアスな雰囲気を醸しだし、そこにストリングスなどを被せてことさらドラマチックに装飾したあのサウンドだ。ウェッサイ再興とあちこちで言われているし、The Gameもしつこいぐらいそうシャウトアウトしているのだが、G-Funk系トラックは皆無だし、西海岸出身のゲストもNate Doggのみなので、あまりウェッサイな雰囲気はない。

 そしてここに加わるのがKanye West、Just Blaze、Timbaland、Hi-Tekら、個性抜群な著名プロデューサーによる明らかに毛色の違うトラックだ。蟹江氏のM2 "Dreams"は早回しではないもののほぼセオリー通りのソウルネタでThe Gameは既に手中に収めた夢とこれからの夢を語る。ビッグになって母親が誇れる息子になるという立派な夢から、Myaと一発ヤリたいという下世話なモノまでその内容は様々だが、「キング牧師にもアリーヤにもレフト・アイにも夢があった」とサンプリング・フレーズとうまく絡みながらライムするフックは実に印象的だ。

 蟹江が頑張れば常に向こうを張るJust Blazeも負けてはいない。彼もソウルネタ45回転を得意とするが蟹江よりヴァーサタイルなスタイルを持つため、JBの方を高く評価する通も多い。そんな彼の二曲はどちらもアゲアゲで、M8 "Church for Thugs"はひたすらチープなホーン・セクションがわめきたてるクラブ・バンガーなら、M13 "No More Fun and Games"はおもちゃ箱をひっくり返したように賑やかな80'sスタイルのオールド・スクール・ファンクだ。フックではN.W.A.の"Gangsta, Gangsta"が絶妙にサンプリングされていて、ゲーム・オタクなJBの遊び心が存分に発揮されている。

 しかし金星は彼らと比べるとずっとネーム・バリューの低いCool & Dreが手がけたM3 "Hate it or Love it"に献上したい。これはフックだけでなく1stヴァースも50centという、主役の座を完全に奪われたトラックだが、レイドバックしたスタックス/ハイ風ソウルネタと50centの鼻歌風ラップが絶妙にマッチングしており、爽快なカタルシスを味わえる。ギャングスタ嫌いな人も予備知識なしに聴いたら間違いなくはまるであろう傑作だ。愛する女性に真摯に愛を語ったり(M17 "Don't Worry")、定番だが生まれたばかりの息子に対する溢れんばかりの想い衒いなく披瀝したり(M18 "Like Father, Like Son")、感動モノが多い本作だが、この曲も「まともな人間になりたかったけど家庭は崩壊して世間も冷たくこうなるしかなかった」といった泣かせる話。

 自身の『Encore』と2Pacの『Loyal to The Game』でプロデューサーとしてのボキャ貧ぶりを晒し、ヒップホップ・ヘッズから顰蹙を買ってしまったEminemの手による"We Ain't"もここで面目躍如とばかりに素晴しい出来となっている。基本は相変わらずのDreをチープにしたようなトラックだが、ひたすらわめき続けるコロ助風ヘリウム声と、「the game」という言葉が出てくるEmやDreの過去の曲をうまくコラージュしたフックは新鮮だ。ただ2ndヴァースを担当するEmがほぼ息継ぎゼロで1ヴァース完走するという超人的離れ業をやってのけているため、The Gameの立つ瀬がないかなり悲惨な状況に陥っている。彼もEmそっくりのフロウで必死の反撃するが(本当にそっくりw)、最終的には「get Dre on the phone quick / Tell him Em just killed me on my own shit (ドレーに電話で俺の曲なのにエムが俺を負かしたって言ってもいいぜ)」と自ら負けを認めてしまっている。だがこんな謙虚さも彼の良いところかも知れない。

 これまで様々な新人ラッパーがあらゆる肩書きを引っ提げて大袈裟に登場しながらリスナーの期待に満足に応えられず、早々に退場していく姿を幾度と無く目撃してきた。しかしThe Gameは過去最高のプレッシャーを背負いながら、見事期待以上のものを出すことに成功したと言える。もちろん人材、金の両面で恵まれていたが、非公式で出された過去の音源などと聞き比べると別人のようにラップ・スキルが上達しており、その努力たるや半端なものではなかっただろう。また固有名詞出まくりのライムも茶化されがちだが、ただ羅列するだけでなく「'Pac is gone and Brenda still throwin babies in the garbage / I wanna know "What's Goin' On" like I hear Marvin」といった感じでひねりが利いているし、相当クラシックを聞き込んで勉強した様子も伺え(家庭教師はエミネム先生か?)微笑ましくも思う。これを今後も彼のカラーとすればかなり面白いラッパーになるのではないだろうか。総監修を務めた50centも新作が控えているが、本作を越えるのはそう容易いことではない。



おまけ:本作で出てくる固有名詞とその登場回数(ソース:AllHipHop.com

Dr. Dre 35
50-Cent 17
G-Unit 10
Notorious B.I.G. 8
Eminem 8
Tupac 7
Compton 7
Eazy-E 5
Young Buck 4
Nate Dogg 4
Lloyd Banks 4
Snoop Dogg 4
Mary J. Blige 4
Mase 4
Jay-Z 3
Eve 3
Michael Jackson 3
Jam Master Jay 3
Martin Luther King, Jr 3
Nas 3
Left Eye 3
Sean 撤uff Daddy・Combs 3
Aaliyah 3
Whitney Houston 2
Kanye West 2
Mya 2
Tony Yayo 2
Busta Rhymes 2
Just Blaze 2
Rakim 2
Shaq 2
Ms. Shakur 2
Ms. Wallace 1
Kool G Rap 1
Vivica A. Fox 1
Ronald Reagan 1
Huey Newton 1
Public Enemy 1
Flavor Flav 1
Whoo Kid 1
DJ Clue 1
Compton痴 Most Wanted 1
Marvin Gaye 1
Vanessa Williams 1
Serena Williams 1
R. Kelly 1
Black Rob 1
N.W.A. 1
Loon 1
Ashanti 1
Tyra Banks 1
Master P 1
Alonzo Mourning 1
Havoc 1
Prodigy 1
Timbaland 1
Bobby Brown 1
Ed Lover 1
Monie Love 1
Shyne 1
Beyonce 1
Ice Cube 1
Xzibit 1
Mariah Carey 1
Suge Knight 1
Chris Rock 1
Souljah Slim 1
Randy Moss 1
Kevin Lowe 1
LeBron James 1
Yao Ming 1
Usher 1
Guerilla Black 1
Jimmy Iovine 1
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コメント

圧巻!

なレビューに思わずAlbumをGetしたくなりました。
勉強になるなぁ~。

あっ、maimaiで沢山(?)linkフチャクさせちゃいました。
ありがとうございます♪

RE:maimaiさん

ええ、かなり気合い入れて書きました。
久々の大作レビューでござい。
じゃんじゃんばりばりうちのリンクからご購入頂けると
ありがたいかぎりですw
ご紹介もサンキューです!

The Gameと、モー娘と。

魂小僧さんは本当にこういったアルバム評上手いですよね。
去年のMos Defのレヴューなどは、今でも時々読んでしまうくらいなのですけれども、今回のもやっぱり流石でございますね。
尊敬モノです!

The Gameのデビュー盤、個人的にはそれほど好みの盤ではなかったのですが、それでも質の高さは否めないですね。50の馬鹿売れしたデビュー盤よりは全然聴けますし、売れるのも分かります。50があれだけ売れたのは正直よくわかりませんでした。

ラップも50より聴けますし、曲のクオリティの高さと、バラエティの豊かさ、これが素晴らしい。R&B陣との仕事も悪くないし。Just Blaze信者の私としては、当然彼の仕事も捨てがたいのですが、ベストを挙げるなら、ここは魂小僧さんと同じくクール&ドレの"Hate It Or Love It"ですね。

(私の嫌いな)50のラップもすんなり聴けるほどの良トラックで。コイツらはTerror Squad(他)の仕事でもなかなかいい仕事をしてたんで、これを機にまた一目置きたいと思います。

別エントリーのコメントの続き。
顔が藤本で、性格が矢口?
矢口ってどういう性格なんすか?(笑)。今度は、このThe Gameレビューと同口調でモー娘レビューなんかも宜しくお願いします(笑)。勉強させていただきます。

私は高橋愛好きですね。いつだったかTVでふと見たときに「あ、カワイイ」と(笑)。もちろん顔だけですが。人気あるのかな。
ここでようやく好みの違いが見えましたね(笑)

タタやんは、本当におっしゃる通り、本人も気さくで可愛らしかったですよ。タイとかでは本当に絶大な人気を誇ってるのにもかかわらず、あの親しみやすいキャラがいいですよね。いい具合にアメリカのフランキーさが利いてます。

つうか綺堂さん、お身体のほう大丈夫ですか??
更新が長く空くと、ちょっと心配になるのですが。。

RE:サカキさん

"Hate It or Love It"は今年の私的ベストトラック上位
に食い込むこと間違いなしですね。
ありゃどこをどう切り取ったって名曲です。
ほとんど50の曲になってますが。
どうもこれが次のシングルになるようで、
Young Buck、Tony YayoらをfeatureしたRemixが
作成される予定らしいですね。
Cool & Dreはダンジョン・ファミリーなんですよね。
そういやTSも彼らで、やりますな。

蟹江対JBですが、ブループリントで初めて意識したときから
蟹江の"Izzo"とかよりJBの"Girls×3"の方が好きでした。
蟹江のソロ聴いてから一気に蟹江派になったんですけどね。
でも冷静に考えるとJBの方が意外性があるし、
ハズレもないですよね。やっぱりJB派なのかな。
The Gameに提供した二曲も最高っす。
ということで、やはりサカキさんと好みが似てました(笑)。

でもモー娘。の好みは違ったみたいですね。
矢口は頑張り屋で気だてのイイ子ですよw
ちょっと前までは彼女たちの番組が活力源でした(爆)。
でも最近はほんと元気ないですね。
またLOVEマシーンみたいなのをつんくが書いてくれればいいんだけど。
そのときには必ずレビューいたします。

身体は大丈夫です。軟弱ですがマッチョなギャングスタや
アメリカン・ロック聴いて体力つけた気になります(笑)。
ご心配ありがとうございますm(_ _)m

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