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  Pat Metheny / The Way Up

 Way Up
The Way Up
ザ・ウェイ・アップ
Pat Metheny Group

 世間ではいまiPod Shuffleが大変な人気を集めているが、自分はiPodを使っていてもあまりシャッフル機能を利用しない。ヒット曲だけを集めたプレイリストをシャッフルするのは好きだが、好きなアルバムを何枚かぶちこんでそれをシャッフルするなんて、アルバムとしての構成を重んじるわたしの世界ではありえない話だ。ましてやiPod Shuffleには液晶画面がついておらず、曲名やアーティスト名を確認することも出来ないという。アマゾン大陸のカスタマーレビューで「わたしそんなの普段から気にしてないからどうでもいい。曲さえ聞ければそれでオッケー」という意見を見かけたが、そのときわたしの額に青筋が三本ほど浮かび上がったのは言うまでもない。かっこわらい。

Apple iPod shuffle 1GB M9725J/A
Apple iPod shuffle 1GB M9725J/A

 曲名に限らず、アルバムは多かれ少なかれ何らかのコンセプトとメッセージを有している。そしてそこには時に小宇宙とも呼べるひとつのストーリーがある。シャッフル機能はこれらを完全に無視する逸脱行為に他ならない。心血注いで作品を作り上げたアーティストに対する侮辱とも言える。少なくともわたしにとって、頭の先から爪の先まで納得のいく作品に出会えた時の喜びは何ものにも代え難いものだ。だからわたしはiPod Shuffleの存在を断固否定する。これはもはや洋楽ヲタとしての意地である。かっこきもい。

01. Opening 05:17 (Metheny/Mays)
02. Part One 26:27 (Metheny/Mays) Listen
03. Part Two 20:29 (Metheny/Mays)
04. Part Three 15:54 (Metheny/Mays)

Pat Metheny : Acoustic, Electric, Synth and Slide Guitars
Lyle Mays : Acoustic Piano and Keyboards
Steve Rodby : Acoustic and Electric Bass, Cello
Antonio Sanchez : Drums
Cuong Vu : Trumpet and Vocals
Gregoire Maret : Harmonica
Richard Bona : Voices and Percussions (as cameo)
David Samuels : Additional Percussions (as cameo)
Rob Eaton : Producer

Recorded : 2004 at Right Track Recording, NYC


 そしてそうした思いに強くリンクしているのがPat Metheny Groupの新作『The Way Up』だ。トータル68分に及ぶこの作品だが、中に入っているのはなんと一曲のみ。便宜上[Opening][Part1][Part2][Part3]の四パートに分かれているが、それはあくまでリスナーに対する最低限の配慮としてつけられた”タグ”であり、多くのサイトで書かれているような四部構成の組曲、或いは交響曲という意味ではない(わたしも勘違いしていた)。

 日本盤は四分の追加収録部分があるが、これは原盤に四分足したとか四分のボートラが追加されているとかいうのではなく、全体の中に包含されているらしい。いわば日本盤自体が輸入盤のリミックス、或いは別ヴァージョンというわけである。とりわけ日本に多くのファンを抱えるPMGの粋な計らいだ。同時に熱心なファンにとっては二枚とも買わざるを得ない極楽地獄でもある。

 このアルバムは一種のプロテスト・ミュージックなんだ。何に対してのプロテストか。今世界はより狭く、小さくなり、細部を気にする余裕もなく大ざっぱに物事を処理する方向に向かっている。その現状に対してもっと長い目をもとう、もっとディテールを、もっと統括的な音楽を、という提案をしたかったんだ。以前は本来8分ある曲を、4分に縮めなくてはいけないというプレッシャーに悩まされていたけれど、今はその時代が懐かしいほどだ。現時点では、携帯の着信音に代表される、たった2小節が音楽のゴールになっているのだから。それでいいのだろうか。ぼくたちは、もっと長い形でぼくたちの音楽的アイデアをサウンド化したいと考えた(ソース


 上記はパット本人による言葉であるが、この挑戦的なコンセプトの矛先が、アルバムの体裁を無視した新しい音楽鑑賞法を提唱する”iPod革命”へも向けられていることは明らかだ。このような音楽家としての意地とプライドをかけて完成された本作であるが、なにせあまりに壮大で複雑な構成のため、まだその全体像を完全把握するには至っていない。しかし彼らの強い思いに指数関数的に比例した充実度を誇る入魂の力作であることは一聴しただけで理解できる。巷では早くも「PMGの最高傑作」という声も聞こえ始めているが、それも納得の出来映え。

 本作は音楽家としてのみならず、ひとりの人間として強い危機感を抱かされる現在に問題意識を覚えたパットが、過去と現在をきちんと見据えた上で明るい未来への道筋を探ろうとしているが、その姿勢は”The Way Up(上昇)”というタイトルに表れているとおり、あくまでポジティブだ。そして本作を貫くサウンドも光に満ち溢れている。だが牧歌的で朗らかな明るさではなく、凛とした瑞々しい清涼感を伴った明るさである。楽観視ではなく意志ある希望。強い信念を持つことで困難な状況下でも道を切り開く。そんな印象を抱いた。

 PMGのトレードマークのひとつであるあの無国籍風スキャットが少なく、ポップ度がやや控えめである点は本作に見られる大きな特徴である。また、アコギ、エレキ、シンセを適材適所で駆使するPat Methenyのギターと、いつにも増して美しいフレーズを連発するLyle Maysのピアノの二大柱に、前作からの新メンバー=Cuong Vuのむせび泣くようなトランペットと、本作のためにスカウトされたGregoire Maretの郷愁を誘うクロマチック・ハーモニカが加わることで、サウンドの幅がグッと広がっている。彼らのアグレッシブな即興演奏は随所で聴かれ、ジャズ・テイストがかなり色濃い作品とも言える。超人的なテクニシャンたちによって繰り広げられるスリリングなインタープレイはさながら混沌として行く先の見えない人間社会そのもののようだ。

 四つに区分けされた各パートの途中にも何度かブレイクがあり、大体5~10分ごとに小さな起承転結が見られるので、数曲に分けることも可能だっただろう。しかし紆余曲折を経ながら後半へ向けて加速し、最高潮に達した後で静かな余韻に浸って静かにフェイドアウトする全体の構造は、それ自体が起承転結をしっかり押えた壮大な物語である。パート1冒頭の実に印象的なテーマが全編を通して度々登場することもあり、やはりアルバム一枚がひとつの楽曲構造として自然に浮かび上がってくる。

 本作は構造自体がiPodでシャッフルされることを徹底的に拒絶しているが、その内容自身も一度聴き始めたら思わず最後まで耳を傾けてしまう完全無欠の充実ぶりで、多くの人々にアルバムとして音楽を聴く楽しさを再度教えてくれるだろう。圧縮音源で綾小路きみまろとモーツァルトが同列で聴かれる新たな時代だからこそ生まれた、一枚のレコードとして聴かれるべき超大作。重要なプロモツールであるラジオでかけようがないこのような作品を作ってしまったPat Methenyは本当に尊敬すべき偉大なアーティストだ。

※本当はシャッフル機能結構使ってます。iPod Shuffleも欲しいです。ただ流れ的に否定した方が書きやすそうだったのでそうしました(爆)。



■お薦めレビュー
行ってみようハワイさん
玉野シンジケートさん
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コメント

RE:

はじめまして。TBさせて頂きました。
私もこの作品はiPodで聴けないと思います。ましてやiPod Shuffleなんて、です。あと国内盤は私も買ってしまいそうです。imaginary dayの時もデジパック盤とかリミックス盤とかいろいろ買わされたけど、今回もまたですね。

RE:

最後にシャッフル機能使ってますってオチがウケました(笑)
僕もiPod使ってますが、基本はアルバムの曲順単位で聴きますねー
何聴こうか全く思いつかない時にシャッフルって感じですね。
圧縮音源で更に全部シャッフルだと曲が使い捨てに思えてきて...。
その点、今回紹介されているパット・メセニーのようなアルバムコンセプトって重要ですよね。作り手側にもシングルアーティストって結構いますし(それも好きではありますが)

でも、在庫切れがおさまって普通にiPod Shuffle売られるようになったら
買っちゃいそうです。

RE:メセニー

>tar_ksさん
はじめまして。トラバありがとうございました。
これを書いたあとも何度も聴き返したのですが、
やっぱこれ名盤ですね。
月間ベストアルバムはもちろんのこと、
年間ベストの上位にも食い込んできそう。
国内盤は皆さんのレビューを見てから検討したいと思います。
比較レビューとかしてもらえるとありがたいです!

>common19さん
ウェブリングでiPod Shuffle用のリストを作ってみよう!
って企画があがっていたので、自分もスーパー・ベストを
作ってシャッフルしてみたら楽しくてとまりません(笑)。
でも普段はやっぱアルバム単位ですね。
レビューする楽しみもあるし。
シャッフルする場合はそれ用のプレイリストでって感じかな。
iPod Shuffleは腕にバンドでとめれたりする軽量性がいいですね。
でも液晶がないのは淋しいかも。

あった。

そいえば見た記事だにゃ。
ん~
スゲェ=ちょろっと試聴中

RE:メセニー

パット・メセニーはJazz/Fusion界の巨匠なので、
日本でも大人気なんですよー。
Jazzと言ってもとっつきにくくなくて、
軽く聞き流すこともできちゃうからお薦め。
もちろんじっくり聴いても手応え十分です。

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