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  John Legend / Get Lifted

 Get Lifted
John Legend / Get Liftedフル試聴

 これまで数多くのKanye West作品でキーボード、ボーカルなどを担当してきた蟹江ファミリー最重要人物=John Legend(以下、伝説君)のデビューアルバム。蟹江氏の右腕と言っても、傲岸不遜な態度が毎度取り沙汰されるボスと違って伝説君は見るからに大人しそうなオヤジっぽい青年である。ちょっぴりハスキーでいなたい声もソロイストとしては少々地味で控えめだ。しかしボスのようにやたら自己主張の激しいアーティストが多い中にあっては、その人畜無害な佇まいが逆に新鮮なのかも知れない。

 サンプリングや打込みを多用していても人肌の温もりが感じられるという、まさに蟹江印なサウンド。ジャケットから伺えるビンテージな質感もよく出ているが、それを支えるのは伝説君自身によるピアノ、オルガン、ローズなどの鍵盤楽器だ。前半は特に蟹江的プロダクションにマイナー調の切ないメロディーが載った曲が多数を占めるが、後半に行くにしたがってアコースティック楽器の割合が増大。彼のルーツであるゴスペル色が強くなって曲調もパッと華やぎ、どんどんシンプルになっていく。

 ピアノを弾きながら歌うネオソウルスタイルはAlicia Keysの男性版と言って差し支えないだろう。ただし伝説君には華が全くないので、すっぴんもんぺ姿のAliciaとしておこうか。その一方、あちこちで引き合いに出されているD'Angeloとはかなり異質な精神性の持主でもある。おそらく「D氏に匹敵する才能の持主」という意味合いでの引用だとは思うが、2人はほとんど真逆とも言って良いほど対照的な存在で似ても似つかない。

 昨年他界したRay Charlesが賛美歌であるゴスペルと悪魔の音楽とされたリズム&ブルースを融合させてソウルが誕生したのは有名な話だが、ひたすら猥雑で、言葉は汚く、精神をひどく病み、混沌を極めているD氏はまさしく悪魔に魅了されたリズム&ブルース寄りのアーティストと言える。一方、絵に描いたように誠実な男でドラッグやセックスの描写も無く、ひたすら前向きな人生を説く伝説君は明らかにゴスペルサイドの人間だ。D氏が肉体労働者でMaxwellが画家としたら、伝説君はさながら学者か小説家の風情。その上で敢えて似通ったアーティストを挙げるとすれば、ネオソウル界随一の優等生=Musiq (Soulchild)になるのではないか。

 また本能のまま奏でられるハラハラドキドキの綱渡りセッションが奇跡的なグルーブを生んでいるルーズなD'Angeloに対し、伝説君の楽曲は極めてタイトで入念に計算され尽くした印象を受ける。ネオソウル作品の多くはアルバム全体の流れを重視するため、楽曲単位ではメロの輪郭がぼやけていることが多いが、伝説君のメロは非常に明瞭で覚えやすい。ネオソウルというより寧ろMary J Bligeに代表されるヒップホップ・ソウルっぽい瞬間もある。しかしアルバム全体としての流れはしっかり保たれており、そこはやはりネオソウルマナーに従っていると言えよう。

 自分はD'Angeloのようなカオスの中に一瞬の美を描く破滅的なアーティストに惹かれるため、あまりに優等生過ぎる伝説君にはほとんど魅力を感じることができなかった。本作におけるヒップホップ・テイストも彼の内から滲み出ていると言うより、蟹江やWill.I.Amらプロデューサー陣によって後付された印象が強い。シンガー/演奏家/作曲家としての彼は非常にオーセンティックなスタイルで、自ら先頭に立って何か新しいものを提示するタイプではなさそうだ。あなたがもし春の陽射しのように明るく優しいソウルミュージックを求めているならば、滋味溢れるマイルドな歌声でハートフルな旋律を奏でる本作はうってつけの一枚かもしれない。しかしStevie WonderやDonny Hathawayのように慈愛の中に悲哀をそっと忍ばせるほど熟してもおらず、まだまだ食すには時期尚早と感じられた。



■その他のレビュー
notraxさん
fleasoulさん
Hello World IIさん
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コメント

伝説君

こんばんは。
こちらには初めて書き込みさせて頂きます。
宜しくお願いします。

表題の伝説君のレビュー、とても興味深く読ませて頂きました。
カニエ・ウェストという人が手掛けた楽曲は、私は恐らくジャネットに提供した曲くらいしか聴いたことがありません。しかし今月号のロッキングオンのHot Newsに、スピン誌が選んだ昨年のアルバム・オブ・ザ・イヤーをカニエが受賞しているのですね。ミーハーマインドの観点から、今さらなのですが、この作品を聴いてみようかなと思っております。(聴きましたか?)
伝説君のレビューから、私が想像したのは、グレン・スコットでした。ってゴスペル&鍵盤というキーワードからなのですが、どうでしょうか?
余談ですが、アリシアご推薦というと、自分は昨年J-Waveでヴァン・ハントだという話を聞いた気がしたのですが、アリシアのアルバムでも演奏しているともDJが言っていたので、そう考えるとまさに伝説君こそそれで、私の完全な聞き違いもしくは勘違いだったわけですね。
伝説君のアルバムはヒットしているみたいで、ビルボードのアルバムチャートの上位にいますね。金欠病でなかなか新作を買えない身ですが、聴いてみたいものです。
長文で失礼しました。
ではまたです!

RE:PRINCE_CONTROLさん

去年出た蟹江さんのアルバムはヒップホップ系メディアでは
もちろんのこと、ロック系でもほとんどで年間ベストの一枚
に選出されてましたね。ブレンダー誌では一位でした。
僕もめちゃくちゃ気に入ってしまって私的年間ベストNo.1
に選びました。
ロックネタも多かったり(ドアーズ、マイケル・ボルトンなど)、
生楽器を多く取り入れたバンド・サウンドっぽいところも
あったりするので、なんとなくプリンスに通ずるような
ヘテロさも感じます。
歌詞もかなり面白いので日本盤がいいかも。

グレン・スコットは僕も好きですね。
確かに似ているかもしれません。
でも伝説君の方がずっとオーセンティックなソウルやってます。
ヒップホップテイストなどは彼自身から滲み出ているというより、
蟹江さんたちが後から付け加えた感じがして。
オルタナ好きのわたしとしては、そこがちょっと不満に思いました。

ヴァン・ハントをアリシアが気に入ったという話は
確かにありましたね。記憶違いじゃないですよ^^
伝説君のアルバムはBETとMSNでフル試聴できます。
MSNはWMPがあればOK。ログインの必要はありません。
一度聴いてみて下さい。
http://entimg.msn.com/i/asx/audio_streams/
JohnLegend_GetLifted.asx
↑改行してあるのでコピぺして明けて下さい。

RE:魂小僧さん

早速のお返事ありがとうございました。

> ロックネタも多かったり(ドアーズ、マイケル・ボルトンなど)、生楽器を多く取り入れたバンド・サウンドっぽいところもあったりするので、なんとなくプリンスに通ずるようなへテロさも感じます。

 ドアーズネタもあるのですね!ドアーズフリークの私としては、必殺の情報でした。これは買わないと!アマゾンに載っているレビューも概ね五つ星ばかりですね。また、そのレビューの一つに最終曲"Last Call"が黒人音楽の全ての要素を包含しているという表現があり、しかもプリンスに通ずる長尺の曲だと言うことで、これも早く聴いてみたいものです。

> 伝説君の方がずっとオーセンティックなソウルやってます。

より真性なソウルサウンドと解釈すればいいのでしょうか?グレンの音楽はVersatileなもので、Soulという枠からはみ出ているものが多かったので(ファーストは特に)、そういった観点から、伝説君のアルバムは(Hiphopテイストを後から加わえられたとは言え)よりSoulという枠から逸脱しない作りということなのですね。
今、リンク先をコピペしてみたのですが、当方Macの為なのか、はたまた未だにOS 9の為なのか、上手く機能しないようです。残念です。・・・が、こちらもいずれ、カニエのアルバムの次に買ってみようと思います。

再び長文ですみません。(ヴァン・ハントの件もありがとうございました。最近、忘れっぽいもので・・・)
それではまたです!

RE:PRINCE_CONTROLさん

ドアーズネタは蟹江のアルバムではなくて、
Jay-Zの『Blueprint』に入っている"Takeover"でやってます。
"Five to One"ネタですね。
『The College Dropout』のネタはこんな感じです。

Jimmy Castor Bunch - I Just Wanna Stop
Lauryn Hill - Mystery of Iniquity (re-interpretation)
Marvin Gaye - Distant Lover
ARC Choir - Walk With Me
Michael Bolton (Blackjack) - Maybe It's the Power of Love
Luther Vandross - A House Is Not A Home
Aretha Franklin - Spirit In the Dark
Mandrill - Peace and Love (Amani Na Mapenzi)-Movement III (Time)
Chaka Khan - Through the Fire
Death In Vegas – All That Glitters (vocal sample)

Glen Scottの1stは確かに色んな要素がごたまぜになってましたね。
2ndはネオソウルブームに迎合したかのような、
やや凡庸なサウンドに感じられてちょっと残念でした。
一方、伝説君はおっしゃるとおり、より真性なソウルサウンドです。
レビューで書いたように歌詞内容が前向きでわかりやすいメロのため、
日本人ウケがいいのはこちらかもしれません。

フル試聴は聞けませんでした?
改行してあるので一行にしたものをWMPで開けると
聞けるはずなのですが…。
でも、お買いになるのでしたら、それまでのお楽しみに
とっておいた方がいいかもしれませんね(^o^)
PRINCE_CONTROLさんもマックなんですね。
マックで見るとレイアウト崩れ起こしてるらしくて、
どうもすいませんm(_ _)m

深い!

さすがの圧巻文章でした!
素晴らしい!!

私の中でJohn君は新鮮でした。
Used To Love UのVを見たときは感心も関心もなかったのですが、
Slumのf/や蟹江のBackなどで目を引き始めました。みんなと反対?
あまり気に入らない音・声かな~などと頭をかすめてましたけど、
ちゃんと聴くとハマってしまいました。
自分の関心外だったからこそ、新鮮だったのでしょうか?(笑)
「最高」の域ではないのにReplay頻度は多いんですよ。

余談ですが、レビューを読んで無性にダニーハザウェイが聴きたくなりました!
起こさなくっちゃ!

RE:伝説君

ただ自分の趣味に合わなかっただけで、
良いアルバムですよね。
これを絶賛する人が多いのもわかります。

>Used To Love UのVを見たときは感心も関心もなかったのですが、
>Slumのf/や蟹江のBackなどで目を引き始めました。

というのは似てるかも?
名脇役っていうのかな。
主役になるといまいちだけどバイプレイヤーとしては
光り輝くタイプではないかと。
あ、光り輝くというのはおでこのことではありません。

Donny Hathawayは昨年出たライブ盤がすごく良かったですね。

日本盤が

2曲ボートラ付きで出てますね。
分っていたんだけど待ちきれませんでした。
中古で出回ったら日本盤も買おうと思う今日この頃です。

うちにTBくれた熊さんの「熊日記」にて「大好きなDILATED PEOPLESの「THIS WAY」でコーラスをやっていた人ということでCDを買ってみたんだけど、「THIS WAY」のときの印象は「高らかに歌う人」と言った感じだった。
このアルバムを実際聞いてみるとあまり声を張り上げるタイプの人ではないことがわかった。」っていうのが面白かったです。
http://blog.livedoor.jp/hirokumakuma0605/archives/12788855.html

高らかに歌う人っていう表現がおもしろいですわー。

RE:

このたびも、素晴らしいレビュー、ありがとうございました。
アーティストの位置付けみたいな解説は、とても参考になります。

ちなみに、タワレコで試聴したんですが、私はイマイチでした。
それよりも、このレビューを見て、ますます気になったのがD'Angeloです。
まだ未聴なんです(^^;)。
お勧めはやはりVoodoo(だっけ?)あたりですか?

RE:ジョンレジェンド

>Kaiserさん

日本盤は中古で買っていいぐらいの値段ですよね。
昔は日本盤派だったんですけど、
たった1,2曲と解説・対訳のために
1000円近くの差額を払うのが馬鹿らしくなっちゃって。
熊さんのレビューは未見でした、
ご紹介ありがとうございやんす。

>めぐみさん

D'Angeloは2ndのVoodooの方が”名盤度”は高いと思いますけど、
最初は1stのBrown Sugarからの方がいいと思います。
こっちの方がジャジーでメロウでわかり易いアルバムですし。
アマゾンならどっちも980円なので二枚同時購入でもいいかも?
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B000002TWN/

なお下記サイトのTOPページでレアトラックを中心にいろいろ聞けます。
http://www.dangelosangels.com/AngelHome.html

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