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  U2 / All That You Can't Leave Behind

 All That You Can\'t Leave Behind

 泣く子も黙る超ビッグなモンスター級ロック・バンド=U2の10作目。同時多発テロ勃発前年に発表された作品ながら、その後の不安定な世相を予期したかのような力強い人生の応援歌、平和を願う歌、ずばりニューヨークを歌った歌などを収録し、圧倒的な支持を獲得。2000年と2001年のグラミーにおいて最高賞に当たるRecord Of The Year2年連続受賞を始め計7部門獲得という偉業を達成し、ビルボードHOT200で2000年と2002年の両年に最高位3位を記録するというロングセラーとなって、今日までにアメリカだけで約400万枚を売り上げている。

 自分はU2と言えば何をおいてもまず『Joshua Tree』('87)という世代で、10代に繰り返し聴いたこのアルバムは今も大好きなのだが、それ以前のアルバムとなるとリズム隊が貧弱でサウンドに厚みがなく、またボノが書く政治色の濃いリリックもあまりに直截的すぎていまひとつ入り込めなかった。その一方でその頃のエッジのディレイを最大限に活用したイマジネーションを掻き立てられる超個性的なギタープレイに魅せられていた僕は、リズム隊が腕を上げ、テクノに急接近してデジタルなサウンド・グルーヴを追求した90年代のU2にも釈然としないものを感じていた。

 しかし本作は4th『The Unforgettable Fire』('84) 以来U2サウンドを支え続けてきたダニエル・ラノワ&ブライアン・イーノが従来どおり全曲プロデュースしているものの、そのサウンドは80年代のU2とも90年代のU2とも異なっている。80年代の情熱的で真摯な空間的広がりのある叙情的バンド・サウンドに再びスポットライトを当てながらも、90年代の分厚く力強いグルーヴとキャッチーさを宿しており、言うなればその双方を融合したU2の集大成的サウンドが実践されているのだ。これこそ正に僕がU2に求めていた音だった。

 アルバムは先行シングルとしてリリースされ、2000年のグラミー賞でRecord Of The Year、Song Of The Year、Rock Duo/Groupの三冠を受賞したM1 "Beatiful Day"で幕を開ける。心臓の鼓動を連想させる打込みビートと控えめなシンセサイザーで静かに始まりながら、サビに突入すると透明感のあるコーラスがボノの声に被さり、満を持してエッジのクリアトーンのギターが高らかに美しい音色を奏でる、U2が新境地--ネクスト・レベルに到達したことを宣言するにはこれ以上ないオープニング・ナンバーだ。

 続くM2 "Stuck In A Moment You Can't Get Out Of"はゴスペル・タッチの心温まるミディアム・バラードで、アメリカン・ルーツ・ロックを探究した異色作『Rattle & Hum』('88) に収録されていてもおかしくない雰囲気をもつ佳曲。一転してM3 "Elevation"は90's-U2の王道的サウンドだ。エッジのギターはファズやディストーションがかけられて大きく歪み、ダンサブルなリズム隊と有機的に絡み合って強烈なグルーヴを生み出している。ボノのシャウトもセクシーかつ挑発的だ。

 M4 "Walk On"ではイントロでボノが優しく囁く。「And Love Is Not The Easy Thing / The Only Baggage You Can Bring... / And Love Is Not The Easy Thing... / The Only Baggage You Can Bring / Is All That You Can't Leave Behind (愛は容易いもんじゃない/君が持っていける唯一の荷物.../愛は容易いもんじゃない/君が持っていける唯一の荷物/それは決して君が置いてはいけないものだけなんだ)」と。コーラス部のフレーズ、「Walk On, Walk On / What You Got They Can't Steal It / No They Can't Feel It / Walk On, Walk On... / Stay Safe Tonight (歩き続けろ、歩き続けるんだ/君が手にしたものを奴らは奪えない/感じることもできない/歩き続けろ、歩き続けるんだ/今夜は無事であって欲しい)」はとても力強く逞しいが、リスナーに対する激励・鼓舞というよりは哀願に近い響きを持っている。「時には人生を耐えきれない苦痛が襲うこともある。挫けたくなる気持ちも分かる。でもどうか歩き続けてほしい。全てを失っても君は自由で、愛さえ捨てなければ何処へだって行けるんだ。」---概略してこのような内容が歌われるこの曲は本作中で唯一アルバム・タイトルが歌詞中に出てくるトラックであり、シャルル・ド・ゴール空港のロビーに荷物を持って佇む4人を写したジャケットや子供を連れた女性と思しき人のシルエットが印刷されたCD盤面のイメージの謎を解きあかす。ただ闇雲に頑張れと促すのではなく、心に傷を負った人々の目線に立って慈愛に満ちた希望を託す。この素晴らしい楽曲が同時多発テロで疲弊した人々の共通アンセムとして機能し、2001年度グラミーでRecord Of The Yearに輝いたのも当然の結果だと言えるだろう。

 シングル・カットされたのは上記のM1~M4であるが、この後に続く楽曲も『Achtung Baby』('91) 収録の"One"や『Pop』('97) 収録の "Staring At The Sun"などに通ずる真摯で情熱的なロック・バラード M5 "Kite"、M6 "In A Little While"、M9 "When I Look At The World"、アコギ主体の軽快なフォーク・カントリーM7 "Wild Honey"、80's-U2らしい平和祈願ソングM8 "Peace On Earth"、大都市ニューヨークで自分を見失いながらもその魅力からは逃れられないと歌うM10 "New York"、アルバムラストを飾る子守唄のようなM11 "Grace"と、実にバラエティ豊かで印象的なメロディを持つ楽曲が緩急を交えつつ途切れなく続き、最後まで全くテンションが落ちることがない。

 5th『Joshua Tree』('87) で最初の頂点を極め、ある種神格化されてしまったU2は、それからそのようなパブリック・イメージが固定してしまうのを拒むかのように実験的で攻撃的なサウンドに挑戦してきた。しかし本作を聴いていると、そのような音楽家としての闘争や冒険などから解放され、まるで悟りの境地にでも達したかのような突き抜けた印象を持つ。それは彼らが"Beautiful Day"、"Stuck In A Moment"、"Walk On"などで歌う、「現実をありのままに受け入れ、過去に捕われることなく前を向いて進む」という内容を自ら実践することによって得られたものなのではないだろうか。だからこのアルバムには一種の潔さと余裕が感じられ、ごく自然に強いパワーをもらうことができるし、清清しい気持ちに浸ることができるのだ。ロック・ファンには是非聴いて欲しい、実に天晴れな歴史的名盤だ。

時計仕掛けのグランジさんも詳細なレビューを書かれています。
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コメント

今先日トピックに挙っていた"Weekend Sunshine"を聴きながら読みました。いろいろな音楽がかかるので好きな番組ではあるのですが、
この番組はちと朝早いのもあってあまり聴いてません。
何故にこのタイミングでこの作品?でも、本当よく書けてますね。自分にもこんな文才があればいいんですがね。本当はブログでのレビューも書いていきたいんだけど、うまく文章浮かんでこないんですよね。
ちなみに僕は、U2では"Achtung Baby"が一番好きかな。次点は"Heartland"以降の曲の流れが凄い好きな"Rattle And Hum"かな。"Joshua Tree"はあまり好きじゃないです。

RE:quothさん

WS、僕も聞いていました。ラストにDonny HathawayとChris Reaの
クリスマス・ソングがかかって大満足です。
再来週はリスナー年間ベストですが今年は予想外に競争率高そうですね。
んー、二年連続採用の道は険しいかな。

U2のこのアルバムは'00年の作品ですが、特にU2に思い入れがある
わけでもないので、今年の初めにようやく中古でゲットしたんです。
そしたら思いの外良くて、興奮さめやらぬ間に書いたのがこの記事
というわけでして。当時はほとんど人目に触れることが無く
埋もれてしまったのでログ移転を契機にRe-Upしてみました。
こうしてレスを頂くと再掲したかいがあったというものです。
ありがとうございました(^o^)/~

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