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  Mos Def / New Danger

 New Danger

こちらでフル試聴できます。

 前作『Black On Both Sides』収録の"Rock N Roll"でElvis Presley、Rolling Stones、Kenny G、KoRn、Limp Bizkitらを槍玉に挙げ、「てめーら、黒人の音楽盗みやがってこの野郎、ロックンロールは黒人のもんだ!」とかなりラディカルな主張(逆人種差別に近い)をぶちまけたMos Defが五年後に行き着いたもの。それはまさしく彼自身が「ロックンロールを黒人の手に取り戻す」試みだったようだ。

 二年ほど前から一部のコンシャスなヒップホッパー達によって、旧来のSoul、Funk、Jazzなどに加え、初期のRock'n Roll、BluesなどをRapに有機的に取り込もうとするチャレンジングな動きが活発化していたが、本作はその成否はさておき、Commonの『Electric Circus』('02)、Andre3000 (Outkast) 『The Love Below』('03) と同等、もしくはそれ以上にそうした意識を前面に押し出している。並行してアルバム製作が伝えられていたMos主導の黒人ロック・プロジェクト=Black Jack Johnson※名義の楽曲も4タイトルあることを鑑みると、本作はラッパー=Mos Defの2ndというより、BJJとの共同製作アルバム第一弾と見なした方が合点がいくのかもしれない。

※Vo: Mos Def、Guitar: Dr.Know of Bad Brains、Bass: Doug Wimbish of Living Colour、Dr: Will Calhoun of Living Colour、Key: Bernie Worrell of Funkadelic, Parliament

 とりわけ前半はロック度が高い。気怠いブルース・ファンクM1 "The Boogie Man Song"はイントロ的な意味合い、メタル・ギターでhip-hopリスナーに容赦ない洗礼を浴びせかけるM2 "Freaky Black Greetings"もBlack Jack Johnsonのお披露目程度の内容だが、M3 "Ghetto Rock"とM4 "Zimzallabim"はAndre3000の"Hey Ya"ほど革新的ではないものの、KoRnやLim Bizkitとは異なる形でのラップとロックの融合に一定の成果を見せている。
 
 白人に牛耳られたレコード業界を批判するM5 "The Rape Over"はJay-ZがNaSをディスったナンバーとして有名な"The Takeover"(produced by Kanye West)の替え歌(ラップ)だが、サンプリングネタがThe Doorsの"Five to One"なのでこれまたロッキッシュに響く。続くM6 "Blue Black Jack"はJimi HendrixやPrinceとも比較される伝説的な黒人ギタリスト=Shuggie Otisをfeatureした純然たるブルース・ナンバーで、Bo Diddley meets Muddy Watersなギター・リフに乗せてMos Defが歌を披露。淫靡なトラックをバックにMosが「モトモトシテヨモトシテヨ」と怪しい日本語を発するM7 "Bedstuy Parade"はまるでBlaxploitation Filmの一場面を見ているようだ。

 まったりレイド・バックしたM6でここまでの過激な内容をクール・ダウンすると、バスドラ&シンバルという簡素なビートの上で飄々とフルートが舞うCrunk Hip-Hop "Sex, Love & Money"が登場。ここからは少しhip-hopの要素が濃くなり、5th Dimension "Let the Sunshine in"をサンプリングしたKanye West製作のM9 "Sunshine"、Grandmasterflash "The Messasge"をサンプリングしたM10 "Close Edge"と純度100%なhip-hopリスナーも一安心の内容が続く。しかしこれまたBlaxploitation Filmチックなエロエロ・ナンバーM11 "The Panties"を挿んで、ポリティカルなM12 "War"の途中から再びメタルになだれ込む。

 NaS "No Idias Original"(produced by The Alchemist) のトラックを二次使用した替え歌(ラップ)M13 "Grown Man Business"に続くM14 "Mordan Marvel" は10分近くに及ぶ大作だ。Marvin Gaye "Flyin' High"イントロ部のループ上で鼻歌を唄いながら瞑想したのち、"What's Going On"ネタでベトナム戦争時から何も変わっていないとラップで現代を嘆く二部構成となっている。性愛志向が強い中では若干異色に映るが旧来の理知的なMos Defに出会える本作最大の目玉と言っていいだろう。アルバムはそのテンションを保ったまま佳境に入り、ストリングスとブラスがメインのトラックで比較的まともなhip-hopチューンのM15 "Life Is Real"、アルバム前半ほど激しくはないものの歪み系ギターをfeatureしたファンキーなラップ・ロックM16 "The Easy Spell"、ギター・レスの求愛ブルースM17 "The Begger"と続いたのち、若くしてこの世を去った黒人アーティスト達への鎮魂歌M18 "Champion Requiem"で幕を閉じる。

 M2のタイトルを直訳すれば「変態黒人からの挨拶」となるが、ハマる人はとことんハマり、嫌いな人はまったく受けつけないであろう本作を表すものとして「変態」以上に適した言葉はないように思われる。実際海外のファンサイトを覗いても、名作(classic)と絶賛する人とゴミ(garbage)と切り捨てる人に二極化している。私は幸いにもこうしたニッチな音楽を好物にしているので、前作からの変貌ぶりに驚きつつも概ね好意的に受け止めることができたが、それでもまだ消化し切れていない部分も多く、手放しで名作と呼べる状態でもない。ただこのアルバムによってhip-hopの方法論・精神論でロックを換骨奪胎しようとする勇敢でクリエイティブな試みがさらに数歩前進したことだけは確かだ。ロックンロールを奪われた黒人が60年代にソウルを、70年代にhip-hopを生み出したように、hip-hopを白人に浸食されつつある今、黒人達は再び新しい音楽を創造するべく試行錯誤を続けている。
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