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  R.Kelly / Happy People

 Happy People/U Saved Me

※本作『Happy People』は『U Saved Me』との二枚組でリリースされたもものですが、それぞれテーマが全く異なるので個別に取り上げます。

 You know every day is a special occasion ya'll
 You know why? Cause you woke up this morning
           - R.Kelly "If I Could Make The World Dance"


 本作『Happy People』はR.Kellyの出身地=シカゴの伝統的な社交ダンスの一種であり、前作『Chocolate Factory』('03) からのヒット"Step in the Name of Love"を敷衍した音楽スタイル=シカゴ・ステッパーズを主題に、仮想ラジオ局=Chocolate FactoryからR.Kelly演じるMusic Weatherman(音楽予報士?)=Kellzが皿を回すという設定で構成されたコンセプト・アルバムの体裁をとっている。Kellzが曲間で軽快なトークを挿みながら回していく11曲は、まさしく「Happy People=人類万歳※」なミディアム~スロウ系のナンバーばかりで、リスナーを優しく満ち足りた気持ちにさせてくれる。

※直訳は「幸せな人々」だが、アルバムを通してかけ声のように連呼されるのを聞くと、「Happy Birthday=お誕生日おめでとう」と同じ感覚で訳した方が良いと考える。

 ただシカゴ・ステッパーズにはシカゴ・ソウルに限らず全米各地からのヒット曲が使われており、とりわけThe StylisticやThe Spinnersといったフィリー・ソウル・クラシックスがアンセムになったりしていることもあってか、本作のサウンドはシカゴ・ソウルというより寧ろ、フィリー・ソウル(MFSBサウンド)に近い。全体を貫くR.Kellyの思想(歌詞)もまた、美味しいお酒、ロマンティックな恋愛、華やかなダンスなどを切り口にしながら、人種や国境を越えた兄弟愛や、切実な平和への願いを説教臭くなく、ある意味脳天気に訴えかけるもので、フィリー・ソウルの伝統に倣っている。

 しかし「フィリーなシカゴ・ステッパーズ」で片づけられるほど単純でもない。たとえば冒頭を飾る"Weatherman"は天気予報になぞらえて、「今日は街中に愛が溢れて終日平和 / ひとりで悩んでないで外に繰り出し踊って楽しもう」という洒落た挨拶代わりの一曲だが、その節回しは明らかにStevie Wonderをなぞっている。またM10 "If I Could Make the World Dance"のラストでKellz自身が明かすように、M4 "Love Street"はファンク・バンド=Mazeを率いたFrankie Beverlyの、そしてM10自体は「戦争がない世界を想像しよう / ブラザーと握手を交わし / シスターを尊敬しよう」と歌い、そのためには愛とダンスが鍵だとする内容から、歌い口やサウンドに至るまで、Marvin Gayeの影響が色濃く伺える。とりわけMarvin Gayeからの影響はこの一曲に限ったことではなく、アルバム全体から強く感じられる。愛の尊さを歌ったダンス・アルバムという観点からすれば、本作を21世紀の『Let's Get It On』と見ることも可能なぐらいだ。ちなみにFrankie Beverlyをフックアップし、彼のバンドをMazeと名付けたのもまたMarvin Gayeである。

 つまり本作は一見ワン・パターンな作風のようでありながら、シカゴ、フィラデルフィア、デトロイト=モータウン(Marvin Gaye、Stevie Wonder)、サンフランシスコ(Maze feat. Frankie Beverly)と、アメリカ中西部に伝統的な黒人音楽を幅広く網羅し、それを90年代以降最高のR&B/Soulアーティストであり続けているR.Kellyという偉大な才能を通してステッパーズ・スタイルに収斂させた一大ソウル絵巻なのだ。もちろんMarvinやStevieの例に見られるようにすべてが完全にこなれているわけではない。しかしネオ・ソウル一派と同じアーティストを参照していながら、その範疇には収まらない全く異なったスタイルを新たに生み出しているのは紛れもない事実であり、サウンド・クリエイター、イノヴェイターとしての彼の凄まじいまでの才能を改めて証明している。恐らくこの傑作アルバムが契機となって、また新たな波がR&B/Soulシーンに巻き起こることだろう。
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