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  Utada / Exodus

 EXODUS

 帰国子女で売ってた割には英語下手やなー、聴いてるこっちが切なくなるほど声量ねーなー、録音物とは思えんほど音程はずしまくってんなー、いまどき古典的東洋の神秘を踏襲した芸者メイクのジャケって絶対ありえへんよなー…などなど、ネット界隈で色々取りざたされてるようなことを私も思った。

 特に最も物議を醸している(?)"Easy Breezy"の中の一節 「You're easy breezy and I'm Japanesy」はいただけない。Utadaのキャラクターを知っている人間ならば、相手を「気まぐれな遊び人」、そして自らを「尻軽な日本人女」と呼んで、ユーモラスに失恋を茶化す彼女の意図を汲めるだろうが、実際の歌は声色を変えるなどといった(英語での)歌唱能力が圧倒的に不足しているため、そのユーモアを十分表現できているとは言い難く、Utadaに関してまったく予備知識のないリスナーが聴いたら、この自虐的センテンスがユーモアであるか否か判別する以前に、みじめったらしいジャパニーズ・ガールの泣き言のように響きそうだ。

 しかしなんやかんや言って繰り返し聴いては楽しんでいる自分がいる。いっときは1/fゆらぎ云々などと褒めそやされた歌はさておいて、類い希なメロディメーカーとしての才能は今作でもいかんなく発揮されているし、トラックも彼女独自の個性が出ていて面白いからだ。

 デビュー直後のインパクトがあまりに強烈で、未だ「宇多田ヒカル(UTADA)=R&B」という図式が多くの頭の人の中で出来上がっているらしく、「ちんちくりんな日本の女が黒人の音楽やっても相手にされねーよ」なんて声もよく目にする。本作ではとりわけTimbalandというR&B/Hip-Hop界のビッグ・プロデューサーを三曲("Exodus 04"、"Wonder 'Bout"、"Let Me Give You My Love")で迎えているだけに「R&Bで本場に殴り込み!」的な解釈をしている人も多いのだろう。

 しかし冷静に振り返ってみると、宇多田ヒカルの音楽はシングル"traveling"あたりから従来のR&B/Hip-Hop的なビートにテクノ/エレクトロニカ的な味付けを豪華に施し、ロックのフィーリングも取り入れた、所謂J-Popに多く見られる音楽様式が顕著になってきていたわけで、Utada名義の本作も大体においてそれを受け継いだ形となっている。ここ数年、欧米では行間を生かした簡素なプロダクションがジャンルを問わず主流になっており、それに呼応する形で宇多田ヒカル名義の作品よりもビートは太く、装飾はやや控えめ且つより電子的になっているが、基本はあくまで『Deep River』路線そのまま。ジャンル分けするとすればR&Bではなく、Alternative Pop/Rock、既存の海外アーティストに例えるならば最近のMadonnaに一番近い感触だ。

 誰もが考えるように、Timbalandなり、Neptunesなり、Kanye Westなり、今が旬のR&B/Hip-Hopプロデューサーにプロダクションを丸投げした方が話題になったろうし、欧米人の嗜好に沿った音楽が確実に作れただろう。しかしながら、R&BとはSEXを全面に押し出すダンス・ミュージックであって、歌詞のエロさだけでなく、踊りや本人のセックス・アピールなど、過剰な演出が求められるジャンルでもあり、これらをUTADAがクリアーできるとは到底思えない。したがって自らが手がけるJ-Pop臭さを残したままのプロダクションにこだわり、R&B路線に振り子を戻さず、オルタナティブなトータル・アーティストとして売り込んだのは長期的な活動を考えれば正解であったと思う。

 一方歌詞は日本語のものよりやや刺激的になっている。代表例はM4 "The Workout"で、直訳すれば「運動」だが、その内容はもろに「上へ下へ気持ちいい~♪」といったSEX賛歌であり、「夜の運動」について歌っている。本場の黒人音楽の歌詞に比べれば可愛いモノだし、今では女性ロッカーでももっと過激な内容を歌っているが、従来の日本のファンからしたらショックかも知れない。しかし「私は海を越える」といった内容のイントロに続くM2 "Devil Inside"で、「私の内面に潜む悪魔を誰も知らない」と歌い、日本語では表現しにくい心の暗部を描く決意ともとれる巻頭宣言を行っているので、無理にセクシー路線に迫ったというよりは、英語での音楽作りの中で自然に出てきた自己表現の一環と見た方が良さそうだ。大人だけでなく、ティーン層にも、Britney SpearsやChristina Aguileraを始めとする歩く生殖器のようなバブルガム・ポップ・スターの氾濫に辟易している人が多いと伝え聞くだけに、完全にクリーンなイメージでいった方がベターであったと個人的には思うが、これもまたUtadaの偽らざる個性なのだろう。

 総じて、本作はUtada(宇多田ヒカル)のソングライター/サウンドクリエイターとしての非凡な才能を証明する一方で、テレビやライブでパフォーマンスするたびに表面化してきたボーカリストとしての非力さをかつてないほど霰もなくさらけ出しており、どちらの面から見てもかなりの問題作となった。これが欧米にどう受け取られるのか。チャート順位や売上げももちろん気になるが、それ以上に歯に衣着せぬ欧米の辛口な批評家達のレビューに注目したい。
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